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戦前の第9ライブ録音

戦前の第9ライブ録音

フルトヴェングラーが指揮したベートーヴェンの第9と言えば1951年7月29日にバイロイト祝祭劇場で
行われたライブ録音がつとに有名。
ですが、それ以外にもライブ録音は多数あります。
白黒フィルム「フルトヴェングラーと巨匠達」から第9の終楽章コーダの映像。
拍手が鳴りナチスの宣伝大臣ゲッペルスがフルトヴェングラーの元へ向かい握手。
この場面をしっかり映像として捉える巧みさ。
何故かと言えば、これは恐るべき独裁者ヒトラーの誕生日前夜祭として行われたからだ。
フルトヴェングラーは出演をかなり悩んだらしいが結局利用されてしまった。
利用する事に関してはナチが数段上。
政治感覚に乏しいフルトヴェングラーでは太刀打ちできないのある。

★ 私の尊敬するベートーヴェン作曲

  交響曲第9番 ニ短調

  フルトヴェングラー指揮
  ベルリン・フィル 

  エルナ・ベルガー(S)
  ゲルトルーデ・ピッツィンガー(A)
  ヘルゲ・ロスヴェンゲ(T)
  ルドルフ・ヴァツケ
  ブルーノ・キッテル合唱団
  1942年4月19日、ベルリン

録音状態は良好とは決して言えない。
私のように大のフルトヴェングラー好きならコレクションとして所有したいし
あの白黒フィルムでは終楽章のコーダ部分だけなので全楽章を聴きたいので納得である。
戦況も混沌とし負傷したドイツ兵がフィルムで多数確認できる。
ドイツ人を愛したフルトヴェングラーは彼らの為に渾身の第9を聴かせた。
フルトヴェングラーの脳裏には独裁者も無く、ただベートーヴェンの素晴らしい作品を伝道しようとする
気持ちだけ。
ですから録音の悪さはありますが素晴らしい演奏です。
そして約70年後のティーレマンの演奏。
第9の演奏スタイルもだいぶ変わり作品の奥にある理念、理想よりも楽譜に忠実に演奏する姿勢へと
変化しています。
ただ、言わせて下さい。
爆撃最中の演奏会など命を懸けた演奏はとても深い。
音楽に飢えて一時のやすらぎの為に、会場に足を運んだ聴衆を前に自然と熱を帯びた素晴らしい響き。
現代の我々には想像もつかない世界です。
ですからティーレマンにその深さを求めても無理に思う。
ですから、私はフルトヴェングラーやトスカニーニ、クレンペラー、ワルター、シューリヒトに魅力を感じてしまいます。



 2014年3月27日